森林は「天然林」と「人工林」に大きく分けられます。神奈川県の県土面積の約4割が森林で、さらにその約4割が人工林です。私たちが利用する木材のほとんどは、人工林から生産されています。

人工林は天然林とは異なり、人が手を入れることを前提にしている森林で、普通1ヘクタール(100m四方の面積)あたり3,000本もの苗木を植えています。
これは数多く植えることにより苗木を競い合わせ、成長が早まることを期待するからです。

しかし一斉に植えられる苗木は優劣がつきにくく、天然林のような自然淘汰があまり進みません。そのために人の手によって間引くことが必要なのですが、長引く林業不振により、この間引き(「間伐」といいます)が行われていないのが現状です。現在の人工林は木を切ることではなく、切らないことで危機的な状況に陥っているといえるのです。

間伐が行われないと、人工林は「モヤシ」のようになってしまいます。そして混み合った枝葉が日光を遮り、下草も生えず、地面がむき出しになります。このような状態で地面が雨に叩かれると、土壌構造が破壊され、土壌そのものが流亡する危険があります。

林は「緑のダム」ともいわれ、大雨の時に雨水を一時的に溜めて洪水を緩和したり、水質を浄化して、おいしい水を供給してくれたりします。しかし、このような働きも正確にいえば「森林」ではなく「土壌」によるもので、土壌が失われるということは、たいへん憂慮すべきことなのです。

さらに森林には二酸化炭素を吸収する働きもあります。地球温暖化という視点からも森林への期待は高まる一方ですが、樹木も生きものなので、呼吸によって二酸化炭素を出します。樹木が二酸化炭素を盛んに吸収するのは比較的若い時だけで、老齢段階になると、ほとんど二酸化炭素の吸収に貢献しなくなります。それでも存在する限りは二酸化炭素を固定し続けます。

したがって地球温暖化防止対策としては、ある程度の樹齢に達した木を切って、住宅などの材料として長期間にわたって利用し、切った跡に若い木を育てていくのが最も効果的な方法といえます。

では木材を長く使えば良いかというと、もう一つ考慮する点があります。それは、その木材がどこのものかということです。木は重いため、長距離を運ぶと大きなエネルギーが必要になります。

運搬に要するエネルギーを排出される二酸化炭素量に換算して、環境に与える負荷を評価する試みがなされていますが、木材についていえば、地域材だけで住宅を建てた場合の二酸化炭素排出量は、欧州材だけを使用した場合の10分の1以下という試算もあります。
地元の木材を使用することは、エネルギーの節約になり、地球環境の保全にも役立ちます。

このように、間伐材を利用することは森林の保全につながり、さらに地域材を利用することで、地球温暖化防止にも貢献できるのです。